今となってはどうでもいいことだとは思う。
あの日、再生したビデオのこと。
ただ、漢字とカタカナで何か書かれていたと思う。
何行も書き連ねられているわけではなかった。だからタイトルのようなものだと記憶している。
しばらくすると、決して美人とは言えない女が出てきて、
なぜか服を脱ぎ、裸になってシャワーを浴び始めた。
赤い口紅にソバージュの女性だ。
映像は手ブレがひどく、画面も暗くて見えづらかった。
シャワーを終えた女性は、体の水滴をバスタオルで丁寧にぬぐいながら
そのままの格好でベッドへと移動していった。
そして、股間をさわりはじめた。
最初は指を使って。
その後、片手で持てるくらいの大きさの何かを持ってきた。
スイッチを入れるとヴィィィィィンと何か震えるような振動音が聞こえた。
女性はその「何か」を自らの股間に押し当てた。
私はその女性が何をしているのか理解できなかった。
今の私ならわかる。
あの女性はシャワーを浴びた後、オ○ニーをしていたのだ。
あのアイテムは大人のおもちゃだ。バイブやローターの類であろう。
ただ、私には腑に落ちないことがある。
私の知るそれらのアイテムと記憶の中の映像で使用されていたそのアイテムは大きく形状が違っているのだ。
映像で使用されていたアイテムは、私の知るものではない。
いや、知っている。
知っているが、股間に押し当てて使うようなものではない。
当時の我が家にも同じ形状のものがあった。
各家庭に一台あったのかどうかまではわからない。
電池を入れ、スイッチを入れると、机の上の消しカスを自動で吸い込む、
小さい掃除機。
500mlペットボトルくらいの大きさだったろうか。
少なくとも当時の私にはその小型掃除機を股間に押し当てているように見えていた。
映像を見ながら私は思っていた。
いったいあの女性は自分の股間から何を吸い出そうとしているのだろうか。
それともホコリやヨゴレを取ろうとしているのだろうか。
私はその女性が何をしているのか理解できなかった。
一方で、何か良くないことをしているような感覚に陥っていた。
あの日見たビデオはいったい何だったのだろうか。