moncraのブログ

言ったこと、したこと、思ったこと。

内柔外剛(2)

どうでもいいことではないが、どうでもいいことにしてしまいたい。

私は「就職したくない」という考えだけで大学院へと進学した。

 

たいした卒論を書いたわけでもない。

ただ、自己満足のためだけに仕上げたようなものであり、

内容なんて何もなかった。

 

でも、いつしか自己満足は自己欺瞞になっていった。

自己欺瞞は過剰な自己評価になり、

気がつけば、私は研究者を目指すにふさわしい人間になっていた。

 

今になって思えば、私は李徴だった。

 

「俺は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、

求めて詩友と交わって切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。

かといって、また、俺は俗物の間に伍することも潔しとしなかった。

ともに、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心とのせいである。

己の珠にあらざることを惧れるがゆえに、あえて刻苦して

磨こうともせず、また、己の珠なるべきを半ば信ずるがゆえに、

碌々として瓦に伍することもできなかった。」(中島敦山月記』より)

 

これほどまでに私を表す言葉はあっただろうか。

しかし、当時の私は、自分のことをこのように表現することはできなかった。

 

大学院に進学してもたいした発表はせず(できず)

研究会に所属するわけでもなく

ただただ毎日を過ごしていた。

ただただ修士課程の二年間を浪費した。

 

たいした才能も成果もないのに

「俺は教授になるのだ」などと豪語する俺をみた奴らは

さぞかし滑稽だったろう。(つづく)