今となってはどうでもいいのだが、ある日、母親と口論になった。
何が原因かはわからない。
私は理屈できちんと説明しているのに、頭の悪い母親はそれが理解できず、
私は理解できない母親にイライラし、多少口が悪くなる。
母親は私の言い方が気に入らないらしく、
揚げ足取りばかりをするので議論が前に進まず、
何やらよくわからないことを怒鳴っているから私もついつい大声になる。
いつものことだ。
私はそのへんにあった数万円のお金と保険証と携帯電話を持ち、
「出ていってやる」
勢い任せに家を飛び出て自転車で気の向くままに走り始めた。
どれほどの時間が経ったろうか、携帯を見ても母親からの着信は一件もない。
普通ならば鬼のように着信があってもいいものだろう。
気がつけば私は母親に電話をかけていた。
「おい、目の前で家出したんやぞ。普通心配になって電話ぐらいかけてくるやろがっ」
我ながら恥ずかしいセリフ
強がりばかり言うくせに淋しがり屋なんだと気付かされた。