今となってはどうでもいいことのにも思えるが、こんなことがあった。
学生時代、私に第一次コーヒーブームが到来する。
ドリッパーやサイフォン、手動ミルなどを購入し、見様見真似でコーヒーを楽しんでいた。
当時はインターネットはあるものの、も今のようにどこでも気軽に情報を入手出来るものではなかった。
たかがアルバイト程度の収入で、購入出来る豆だってKALDIなどの量販店で買うくらいしか出来なかった。
ある日、友人のタイタン君と自宅でゲームをしていた時、「そうだ、コーヒーでも淹れてやるよ」と言い、自慢げに道具と一緒に「〇〇産の豆が手に入ってな」とか「ローストの具合がどったらこったら・・・」と、今思えば赤面物の蘊蓄を並べながら、カップにコーヒーを注いでいた。
「そうだ、君はこういうコーヒーなんか飲みなれてないだろう。」
「最初からブラックは分からないだろうから砂糖を入れといてやるよ。」
という具合だ。
彼は少し顔を曇らせながらも、黙ってコーヒーに口をつけていた。
よほど彼はコーヒーが苦手だったのだろう。
半分も飲まないうちに「ありがとう。美味しかった。」と言い残して、帰っていった。
私はそれが悔しくてたまらなかった。
せっかくのコーヒーを残されたのだ。
まだ彼にコーヒーは早かったか。と思いながら、彼が飲み残したコーヒーに口をつけた。
塩の味がした。